「レイクサイド」東野圭吾

実業之日本社
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図書館に行ったら珍しく東野作品が並んでいたので、
お、映画化、と何気に借りてきた本。
あまり期待もしてなかったし、なんか湖のそばで人が死ぬんだろう、
とタイトルどおりのことしか思ってなかった。

えらい実験的な小説だったと少しして気付いた。しまった、イロモノか?

最初はなんだか違和感があって、文章が、下手な小説家みたいなのだ。
延々と登場人物が動き、喋り、動き、喋り・・・
途中で気付いた。で、びっくりした。こんな小説はじめて読んだ。

この小説、心理描写を一切排除している。
10人以上にわたる登場人物の、会話と行動、これだけで話が進んでいく。
考えている場面はあるんだけど、「俊介は10秒ほど空間を凝視していた」
といった風に、その人が考えていることは示されない。
ただただ、会話と行動だけで進むストーリー。
いかにも映画化してくれといわんばかりのこの演出、これが小説としても
功を奏していると思った。誰の考えも一切わからないから、
全員の思惑が隠れる、そして気になる。夢中になって読んだ。

夏休み、中学受験を目指す子どもたちは、レイクサイドにある別荘地で
合宿をすることになる。そこには子どもの保護者達も集まってきていて、
4組の夫婦と先生が集まっている。そこに遅れてやってきた俊介、
彼らと妻の美菜子のつながりに疎外されているうち、俊介の部下の恵里子が
突然やってきて場をかき乱す。そして、ある夜、人が死ぬ・・

何故か全員が一致団結して死体を処分しようと画策し始める。
おかしいと思いつつ、皆と行動をともにする俊介。
2重3重に嘘がはりめぐらされているのがわかる。真相はどこに?

心理描写が一切ないってのに、俊介が何を考えているのか、
他のたくさんの人たちがどんな性格で、といったことはちゃんとわかる。
映像的とでもいおうか、動作や挙動から出てくるその人らしさ、を
見事表現していて、うまいというよりない。
で、二重三重の罠を、彼らの挙動から読者は推理するしかない。
いや、もちろん私はいくら推理したってどうせあとで驚かされるので、
わざわざ推理なんかしないけど。
「なんかこいつらとんでもないことたくらんでそう」と思いながら
読み進める緊迫感、スリルを充分に満喫させてもらった。

真相は意外なところに。うわーって思います。うわー・・・
こんな真相もある意味、読んだことないわ・・・ぞっとした。

でも、基本的に性善説とってるよなあ、東野さんって。若竹七海とかとは違って。
今回はこの実験的手法と意外過ぎる結末が充分スパイスになってたかな。
だから今回も後味は悪いようないいような、ある見方からしたらひどいけど、
別の見方からしたら案外後味いいような。
もう、あんまり書くのやめよう。

お受験がテーマになってて、親子についてちょっと考えさせられました。
「さまよう刃」でもそうだったけど、親が子を必死に思う、
愚かだけど愛すべき姿が描かれ、心理描写が一切ないにも関わらず、
最後は心がぐっと締め付けられる気がしました。
油断していたので驚いた。なんか変な表現だけど、得をした気分。
実験小説、イロモノだと思ってたけど、正統派な読後感だったので。

他のブログさんの書評読んでみたけど、心理描写がないことに
これだけこだわってしまったのは私だけ・・もしや、気のせいか?
っていうかそこにこだわりすぎて違う読み方しちゃったかも。まあいいか。